~ 重症妊婦受け入れ困難の事例に関する二階俊博経済産業大臣の発言への抗議声明 ~
先日来、東京都において重症妊婦の搬送先がなかなか見つからず不幸な転帰をとった事例についての報道を見聞するにつけ、私ども「日本のお産を守る会」としても大変心を痛めております。いかに迅速に対応しても突然の脳出血による死亡を完全に防ぎ得るわけではありませんが、亡くなられた患者様やご遺族のみなさまの無念なお気持ちをお察しいたしますとともに、心から哀悼の意を表します。このような生命にかかわる重大な妊娠合併症への対応については、産婦人科医師だけではなく他科医師も含めた救急医療全体の問題として改善に向けて早急に取り組んでいく必要があると考えます。
この事例に関して二階俊博経済産業大臣が「政治の立場で申し上げるなら、何よりも医者のモラルの問題だと思いますよ。忙しいだの、人が足りないだのというのは言い訳にすぎない。」と発言したことが報道されました。
この発言は甚だしい事実誤認に基づくものです。多くの産婦人科医師は日中に通常の勤務を終えた後に当直業務に入り、夜間どんなに忙しくとも翌日も通常どおり業務をこなしています。ほとんど代休も取れません。先日の日本産科婦人科学会の調査では産婦人科勤務医の平均勤務時間は一ヶ月当たり300時間以上にのぼっています。これらの事実に目を向けることなく、すべて医師の怠慢が原因であるかのような発言は、私ども臨床の現場で働く者にとっては看過しがたいものです。
同大臣が「政治の立場で」お考えであれば、産婦人科医・小児科医・その他医療従事者の労働環境の改善や、NICUの整備などに必要な財源を供給していただきたい。何よりも社会保障費削減の基本方針自体を180度転換すべきです。
古来より日本人は言葉には魂が宿っていると信じてきました。モラルを守って精一杯働いている現場の医師を侮辱するような大臣の発言については、ただちに撤回を求めます。
2008年11月13日 日本のお産を守る会